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「耐震偽装問題対策検討ワーキングチーム活動報告と新たな提言」を行いました!

2007/3/16

 当ワーキングチームは、平成17年11月に発覚した耐震構造設計書偽装事件に関し、平成17年12月15日、(1)事案の真相解明、(2)法的問題点の検討、(3)被害住民に対する公的支援策の検討並びに、(4)再発防止のための建築基準法、建築士法等の改正のあり方等について検討するため発足し、4回にわたり緊急提言(1回目は平成17年12月19日(月)、2回目は同年12月26日(月)、3回目は平成18年1月30日、4回目は同年2月24日に各提出)をして参りました。

 事件発覚から一年余を経過し、耐震強度偽装被害マンションの建替えについての取組みは未だ半ばであるものの、事件の全容はほぼ明らかとなり、当ワーキングチームで提言した法制度の見直しも大きく前進を見るに至りました。 ついては、当ワーキングチームのこれまでの活動を振り返り、その成果を検証すると共に、今後の課題について当ワーキングチームの見解を取りまとめましたので、ご報告いたします。

平成19年3月13日

自由民主党 幹事長  中川 秀直 殿
自由民主党 政調会長 中川 昭一 殿

耐震偽装問題対策検討ワーキングチーム
座長 早川 忠孝

I.今後検討すべき課題について(新たな提言)

1 総括

 今回の耐震偽装問題は、姉歯元一級建築士の個人犯罪という面が大きく、それを周囲の関係者が見破れなかった、あるいは事実上助長していた面があったという事案と考えられます。
 しかし、建築確認制度の根幹に関わる構造的な問題もあり、建築物の安全性や建築確認制度そのものに対する国民の信頼を大きく損ね、社会的な問題となった事案であり、決して単なる個別事件として歪小化すべきではありません。

 実際、姉歯事件以降も、福岡のサムシング事件、札幌の浅沼元2級建築士の事件、そして今般の水落建築士の事件と相次いでおり、業界の構造的な面があったことも裏付けられています。 国民にとって重要な資産である不動産に関する安全・安心を守ることは国の重要な責務の一つであり、このような観点にたって自民党及び政府はその責務を果たすべく、法制度のあり方や実務のあり方について絶えず検討すべきです。

2.具体的な提言

(1) 公的支援についての基準作りの必要性

 本件では各種の公的支援がなされましたが、公的支援策の決定に至るまでには様々な意見があり、場当たり的な側面があったことも否めません。
 そこで今後、同種の公的支援をなす場合の基準についてある程度確定した方針を樹立しておくことが必要です。
 公的支援の緊急性、加害者の資力、求償権の確保の可能性、国および公共団体の法律上または道義上の責任の有無及びその程度などがその要素となると考えられます。

(2) 建替え決議の特例

 現在の区分所有法に基づく建替え決議は、建替え決議をするに十分な時間的余裕がある場合を想定しており、そのために2ヶ月間の召集通知期間や反対者に対する催告期間などを設けております。しかしながら、こうした時間要件が、本件において住民の方々による迅速な対応を阻害する場合がありました。したがって、今後こうした事態を想定した例外規定を設けるなどの対応が必要と思料致します。
 なお、藤沢の物件のように販売主が区分所有建物を所有している場合に、通常の所有者と同様に当該販売者の同意を必要とすることは、問題があります。緊急性の高い場合において、瑕疵担保責任を負う販売主については、その同意を不要とする旨の措置を法的に整備すべきです。

(3) 金融

 不動産の担保価値は著しく減少したにもかかわらず、担保権者たる金融機関は既存借入金債務(元本)を減少させることはなく、返済猶予や金利の減免も必ずしも十分なものとはいえず、一部金融機関はそうした配慮を全くしないまま、金利という利益を収受しております。
 現在自民党の政務調査会(住宅土地調査会)においてノンリコースローン等の検討がなされておりますが、担保によらない新しい住宅ローン制度を構築する必要性が高いと思料致します。
 さらに、建替えの際の抵当権の付け替えが各建物の再建手続きを進める上では妨げとなりましたので、円滑に進むよう統一的かつ迅速に対応できる法的手続を整備する必要もあります。

(4) 国または地方公共団体による保全手続き

 加害者に代わって被害者に対する公的支援を行った場合、国または地方公共団体としては加害者に対する求償権を有することになりますが、その保全のための手続がないという問題があります。結果的に回収ができなかった場合は国民の税金による負担となるため、そのような事態を回避するために、できるだけ早期に求償権を確保することができるような保全手続を創設すべきです。

(5) コンサルタントの重要性

 今回の公的支援の中で、最も効果的な支援であったものの一つがコンサルタントの紹介です。緊急的な事態において専門家の存在が被害の拡大を防ぎ、住民に心理的安心感を与え、再建を前向きに進める原動力ともなります。
 国および地方公共団体における公的支援にあたっては、専門家の紹介や費用負担などの支援策を一層強化すべきです。

(6) 破産手続における求償権行使

 破産手続において公的な債権(求償権等)の届出がなされた場合に、これを被害者の債権に劣後するものとすることがより手厚い被害者への支援につながります。本件においては、公的債権届出(求償権)が管財人によって否認されたため、その分を補助金から減額するという措置が採られましたが、そもそも破産手続きにおいて求償権債権が劣後することになっていれば、このような被害者にとって大きな打撃となる事態を避けることができたはずです。  
 オウム真理教事件では同様の事案について特別法を制定し、求償権の行使を被害者の損害賠償請求権に劣後するとの措置が法律に明記されましたが、より一般的な形で同様の対応が可能となるようにすべきです。

(7) 抑止力

 一連の耐震偽装事件では、関係者に対する行政処分が比較的早期に出され、このような事件を起こせば元請建築士であっても建築士としての資格を喪失することが明確にされました。
 しかし、刑事手続の方は若干遅れ気味で、刑罰の重さからしても十分な抑止効果を有しているかどうか不明であり、引き続き検討が必要だと考えます。自らの利益のために不正を行ったり、職務怠慢によって法に違反をすれば、重い処分を受けるということが明らかになれば当然抑止力が働きます。そういう観点から行政庁においては、関係者に対して厳正な処分を行うことが必要であり、そうしてこそ初めて国民も納得すると考えられます。

(8) 姉歯事件の被害住民に対して

 姉歯事件は、すべての被害物件(マンションおよびホテル)の建替えや補修工事が終了していない現段階では「終わり」ではありません。本件における被害住民の方々は、不合理な金銭的、物理的、精神的負担を受け、その被害は長期的なものに及びます。
 国および地方公共団体は原則2年間の賃料等の補助を原則として3年6ヶ月以内まで延長するとの方針を示しておりますが、そのような柔軟な対応を賃料等の補助のみならず、今後生ずる問題点において採るべきです。
 また、金融機関は、従来の方針に従った抵当権の付け替え方針のみならず、既存のローン支払いの猶予および金利の減免等の措置、および新規ローンにおける負担能力や返済計画等への配慮などをきちんとすべきです。
 自民党としても、すべての建替えが終了するまでは、本件についてきちんと状況を把握し、問題点があればこれを適切かつ迅速に解決していくことが求められております。

(9) 姉歯事件以外の事件について

 現在調査中の水落設計士の事件を始め、姉歯事件以外の耐震偽装事件については、早急に調査を行った上、その調査結果を公表すると共に、有責者に対して厳正な処分を行い、併せて被害者に対して姉歯事件における対応を参考にして必要な支援措置を実施すべきです。

これまでの活動報告

第1 活動報告の内容

1.法的検討、関係者に対する対応、関係者の対応

(1) 法的検討

 当ワーキングチームは、国には法的責任があるという前提をもって迅速かつ適切な対応を採るべきであると提言をしてきました。
 最終的な法的責任の有無は訴訟で決着を図るしかありませんが、国および地方公共団体ではこれまでにない迅速さと熱心さをもって本件に対応されてきたと高く評価いたします。

(2) 関係者に対する対応

第1回緊急提言等において提言した関係者に対する断固たる措置はほぼ提言に沿ってなされました。

(i) 姉歯元一級建築士、小嶋元ヒューザー社長、木村建設関係者等に対する刑事手続

(ii) 姉歯元一級建築士や関係建築士への免許取り消し処分

(iii) 住民によるヒューザーおよび小嶋社長への破産手続申立とその実行

(3) 関係者による対応

 各関係者の参考人質疑や証人喚問、国の求償権の保全や住民による財産保全(ヒューザーに対する破産手続申立て)、ホテルによる総合経営研究所に対する訴訟の提起、金融機関の貸しはがしの禁止などは、ほぼ提言どおり対応がなされました。
 しかし、賃貸マンションのオーナー会社が賃借人に対して適切な対応を迅速に取ったという例外を除いては、加害者や関係者の対応は十分とはいえず、今後の課題として引き続き残っております。
 また、住民が破産手続きにおいてヒューザーから取得する配当について、その地方公共団体の助成にかかる配当相当額を控除する点については、その対応の適否について賛否が分かれました。

2.住民に対する配慮

住民に対する配慮については提言に沿って次の各対応がなされました。

(1) 既存のローンの支払い条件に関する金融機関および住宅金融公庫側の配慮(支払猶予や融資対象の拡大等)
(2) 本件による損失についての雑損控除の適用
(3) 住民の仮住居における賃料、移転費用、除却費用および建替え費用の一部の公的負担やその迅速な支払いの実行。特に国と地方の負担を事実上50% ずつとした対応
(4) 当初2年とされていた賃料の一部負担の延長発表
(5) 公的賃貸物件の賃料の減免
(6) 固定資産税評価の際の建物および土地の評価における適切な配慮
(7) 地方公共団体による住民の方々の精神的負担に対するケア
(8) 移転にあたっての家具等の荷物の一時保管やレンタルスペースの無償提供(一部自治体)
(9) 住民票移転や有料ごみなど一部自治体による無償化
(10) 一部確認検査機関や施工主による耐震改修作業への協力
(11) 子どもの学区域に関する配慮
(12) 一部自治体によるコンサルタントの紹介および費用負担
(13) 対応すべき自治体の窓口の統一化
(14) 自治体による丁寧かつ誠実な対応(十分な相談体制や説明会の開催など)
(15) 耐震改修に関する補助の実施

3.ホテルやその他賃貸物件オーナーに対する配慮

 ホテルや賃貸物件については、施工会社や建築士を選定できる立場にあったこと、およびビジネスとしての性格に鑑みて、基本的には自己責任としての対応を求めることとなりましたが、当ワーキングチームとしては関係者へのヒヤリングも重ね、提言をおこなった結果、次のような措置が提言に沿う形で実行されました。

(1) 各地方公共団体において固定資産税や都市計画税の減免等を実施
(2) 耐震改修の際に、現行の耐震基準に適合させることができる工法として、施工アンカー、炭素繊維等について建築基準法令上への位置づけ
(3) 改修に際して業者が工事拒否や解約をしないように通知
(3) 一部自治体による耐震改修に関するガイドラインの作成
(4) 判定委員会の早期立ち上げ
(5) 関係地方公共団体の誠実な対応

4.再発防止

 当ワーキングチームは、第3回緊急提言(平成18年1月30日)において詳細に再発防止に向けた提言を行いました。その結果、多くの内容が既に第164回通常国会における建築基準法等の一部改正、第165回臨時国会における建築士法等の一部改正などによって実現され、第166回通常国会においては販売主等による瑕疵担保責任の履行に関する確保措置について法案が提出されました。(’07/3/6に閣議決定即提出)

5. 残る課題

 当ワーキングチームとして、本件に関する提言が実行されていない点や結果的に不十分だった点などを考慮し、次の各点が今後の課題として検討すべき点であると考えます。

(1)公的支援の基準作り

 本件では、当ワーキングチームの最初の使命が法的責任の有無であったように、そもそも公的支援をすべきかどうか、どのような根拠でどこまですべきかということについて決して統一的な見解があったわけではありませんでした。

 しかしながら、与党の申し入れが事件公表の2週間後には早くもなされたこと、それに対する国土交通省の対応も比較的迅速であったこと、さらには当ワーキングチームが公表の約1ヵ月後に立ち上がり、そこからほぼ毎日視察とヒヤリング、そして4回にわたる緊急提言を行ったこと、関係省庁や地方公共団体も熱心な活動を行ったこと、住民の方々も多くは一致団結して行動したこと等の事情により、多面的かつ奥深い対応を行うことができました。

 しかし、いずれの対応も事前に準備がなされていたわけではなく、場当たり的側面があったことも否めません。そのために被害住民には物理的かつ金銭的な被害があったほか、風評被害や先行き不安感などの精神的被害も発生することになりました。さらには、事件の真相を巡って過熱気味の報道がなされ、不眠不休の対応を行った与党および政府の対応が不当に批判を受けることもありました。

 当ワーキングチームの提言に基づいた再発防止策はほぼ整ったため、新規の事件発生可能性は低くなりましたが、既存の建築物や万が一の場合もありえます。そこで今後、公的支援をなす場合の基準について、本件を参照にある程度確定しておくべきです。

 その際には、緊急性、加害者の資力、求償権の確保、国または地方公共団体等の関与などがその要素となると考えます。

(2) 建替え決議

 現在の区分所有法に基づく建替え決議は時間的余裕がある場合が想定されております。したがって、建替えの重大性に鑑みた慎重な手続が必要とされています。具体的には、2ヶ月間の召集通知期間や反対者に対する催告期間などが設けられており、全員の同意が得られない限り3ヶ月以上は費やされることになります。

 本件においては、グランドステージ赤羽の住民をはじめとする方々からこの手続が迅速な対応を阻害したとの指摘がなされました。周囲の住人からすると危険であると公表された建物がいつまでも残る不安があり、そして住民に対するバッシングが発生することもありました。

 したがって、今後こうした緊急的かつ例外的事態を想定した例外規定を設けるなどの対応が必要です。

 さらに、グランドステージ藤沢のように販売主(株式会社ヒューザー)が一部を所有している(30戸中13戸)というような場合にも、通常の所有者と同様に同意を必要とするのは問題です。緊急性の高い場合において、瑕疵担保責任を負う販売主の同意を不要とすべきです。

(3) 金融

 本件において、耐震強度不十分とされた建物の担保価値は著しく減少しました。にもかかわらず、担保権者たる金融機関は住民側の元本の減免要求には全く応じませんでした。住民の多くは多額のローンを抱えたまま、仮住まいの賃料等の負担を負い、さらには建替えによって2重のローンを抱えることになります。公的な分野は支援による財政支出を行いました。しかしながら、金融機関は利子という利益を相変わらず受領し続けております。

 平成18年2月14日、当ワーキングチームの度重なる提言と要求に応じる形で、全銀協等による申し合わせが発表され、返済の猶予や猶予期間中の金利の引き下げなどが勧告されました。しかし、同勧告に対する対応もまちまちであり、必ずしも被害住民に十分配慮されたとはいえない面もあります。  

 現在自民党の住宅土地調査会の住宅金融小委員会においてノンリコースローン等の住宅金融のあり方について検討がなされていますが、まさにこうした担保によらない新しい住宅ローンの形が求められています。

 また、建て直しの際の抵当権の付け替えが本件における再建手続きを遅らせる一因となりました。上記全銀協等の勧告では一定の方向性が示されましたが、そうした統一的かつ迅速に対応できる法的根拠をきちんと用意しておくことが必要です。

(4) 国または地方公共団体による保全手続き

 加害者(瑕疵担保責任者も含む)に代わって被害者に対する公的支援を行った場合、法的には国または地方公共団体は加害者に対する求償権を代位取得することになります。しかしながら、その債権保全のための手続がないため、加害者からは資産が流出し、結果として求償権を十分に満足できない可能性があります。本件の場合でも、株式会社ヒューザーから資産が流出しているとの報道がありました。

 このような結果についての負担は、最終的に国民の税金によるものとなるため、そのような事態を回避すべきです。そのためには、できるだけ早期に求償権を確保すべく必要な公的機関による保全手続を創設すべきです。

(5) コンサルタントの重要性

 今回の公的支援の中で、最も効果的な支援であったものの一つがコンサルタントの紹介です。具体的には川崎市がグランドステージ溝の口に対して自らの費用負担をもって紹介したコンサルタントの存在が、同物件が最も早く建替えの手続を進ませる原動力となりました。また、一番迅速に対応したグランドステージ池上(公表が他の物件より遅れました)においてもコンサルタントの存在がありました。その他の物件でもコンサルタントの存在により建替えが一般的に早まっております。

 緊急的な事態において専門家の存在が被害の拡大を防ぎ、住民に心理的安心感を与え、再建も前向きに進める原動力となることは、本件により明らかになったといえます。

 今後も、国および地方公共団体における公的支援においては、専門家の紹介や費用負担などの支援を強化すべきです。

(6) 破産手続

 破産手続においては、一般の債権者とともに、公的支援によって国あるいは地方公共団体等が代位取得した求償権や損害賠償債権等も債権届出がなされます。しかし、このような代位取得された求償権や損害賠償請求権等については、一定の要件の下、被害者の直接的な届出債権には劣後させることが、結果的により手厚い被害者支援につながります。

 本件では、このような整理が曖昧であったために、公的な債権について破産管財人が認めなかったものの、被害者への配当額分を補助金から減額するという措置が採られました。その結果、被害住民からはそのような事態は想定しておらず、見込み負担額の予期せぬ増加によって再建が困難になったとの声が当ワーキングチームに多数寄せられました。

 オウム真理教による地下鉄サリン事件では、同様の事態に対処するため、破産手続の特例を定める特別法が既定されましたが、より一般的な形で同様の対応が可能となるような法制度を整備すべきです。

(7) 抑止力

 本件では、平成17年11月の事件公表後、同年12月には姉歯建築士の免許取り消し、翌18年1月には関係8名の元請建築士、3月には1名の元請建築士、4月には2名の元請建築士の免許を取り消しました。

 さらに別件である浅沼二級建築士の事件では、平成18年7月に同建築士の免許取り消し、9月には1名の元請建築士の免許取り消しおよび5名の元請建築士の業務停止、同年12月には1名の元請建築士の業務停止がなされています。

 これらの建築士への懲戒処分は建築士法第10条および建設省(現国土交通省)住宅局長による平成11年12月28日付の都道府県知事宛の通知(建設省住指発第784号)に沿って迅速になされたものです。

 しかしながら、刑事事件については、姉歯元建築士らが逮捕されたのは事件発覚から6ヶ月以上が経過した平成18年4月26日となるなど、国民感情からすると遅きに失した面がありました。

 既に昨年度の法改正により罰則は強化されましたが、今後は刑事および行政処分とも断固たる手続が早期に行われることが抑止力、および国民の信頼回復につながるものであると考えます。

(8) 姉歯事件の被害住民に対して

 以上は本件を踏まえた上での一般的な対応に関する提言です。

 しかしながら、姉歯事件はすべての被害物件(マンションおよびホテル)の建替えや補修工事が終了していない現段階では「終わり」ではありません。

 特に、本件における被害住民の方々は、今まで経験したことがない金銭的、物理的、精神的負担を受け、子どもがいらっしゃる家庭も多く、その被害は長期的なものに及びます。

 国および地方公共団体は平成17年12月以来、原則2年間の賃料等の補助を行っております。この2年間という要件には既にこだわらないとの方針を示しておりますが(平成18年12月5日、構造計算書偽装問題対策連絡協議会が原則として3年6ヶ月以内との方針発出)そのような柔軟な対応を賃料等の補助のみならず、今後生ずる問題点において採るべきです。

 金融機関は、平成18年2月14日付け全銀協等による勧告に基づく抵当権の付け替え方針や、ローン支払いの猶予および金利の減免等の措置、さらには新規ローンにおける負担能力や返済計画等への配慮などをきちんとすべきです。

 いずれにせよ、自民党としても、すべての建替えが終了するまでは、本件についてきちんと状況を把握し、問題点があればこれを解決していくことが求められております。

(9) 姉歯事件の分譲マンション以外の事件について

 姉歯事件における被害には賃貸マンションおよびホテルも多数含んでいます。これらについては事業主の責任ということで、当ワーキングチームとしては金銭的な公的支援ではないですが、通常の耐震改修補助事業の対象とすべきことや、耐震改修における行政手続きの柔軟化や簡素化等を提言して参りました。

 これらの事業主は既に建物を改修ないし建替えを進め、中には営業を再開したところもありますが、思わぬ金銭的な追加負担に苦しんでいる事業主もおります。引き続き注視することが必要です。

 また、現在調査中の田村水落設計士の事件を始め、姉歯事件以外の事件についても、綿密な調査を行った上、適切な公表、被害者への配慮、有責者への厳正なる処分などの対応を行うべきです。

第2 これまでのワーキングチームの活動

(1)平成17年12月15日 欠陥住宅被害者連絡協議会の吉岡和弘幹事長からヒヤリング
(2)12月18日 グランドステージ住吉、グランドステージ東向島、グランドステージ茅場町の3物件について現地調査及び住民からのヒヤリング
(3)12月19日 国土交通省担当者からヒヤリング
第1回緊急提言を武部勤幹事長(当時)、林田彪プロジェクトチーム座長(当時)に提出
(4)12月20日   中央区担当者からヒヤリング
(5)12月21日 国土交通委員会において国土交通省に対する国会質問(松本文明議員)
(6)12月22日 江東区担当者からヒヤリング
(7)12月23日 日本建築士会連合会からヒヤリング
(8)12月24日 グランドステージ川崎大師、グランドステージ江川、コンアルマーディオ横濱鶴見、グランドステージ藤沢の4物件、及び都築佐江戸町マンションの中止になった工事現場を現地調査。4物件については住民からのヒヤリング
(9)12月26日 第2回緊急提言を武部勤幹事長(当時)、林田彪プロジェクトチーム座長(当時)に提出
(10)12月27日 日本建築構造技術者協会、日本建築士会連合会、川崎市役所、藤沢市役所からヒヤリング
(11)12月28日 内閣法制局、財務省、総務省、国土交通省からヒヤリング 7物件の住民代表に対するヒヤリング及び中間報告
(12)平成18年1月5日 日本ERI、日本建築事務所連合会からヒヤリング
(13)1月6日 墨田区役所、稲城市役所、イーホームズ、都市再生機構(国土交通省同席)からヒヤリング
(14)1月9日 グランドステージ川口の現地調査、住民からのヒヤリング
(15)1月10日 総合経営研究所、横浜市担当者、東京都担当者、太平工業からヒヤリング
(16)1月11日 アトラス設計、シノケンからヒヤリング
(17)1月12日 国土交通省担当者からヒヤリング
(18)1月16日 イーホームズからヒヤリング
(19)1月17日 早川忠孝座長による衆議院国土交通委員会での証人喚問
(20)1月18日 アトラス設計渡辺氏からヒヤリング、千葉設計から電話ヒヤリング
(21)1月19日 柴山昌彦副座長、牧原秀樹事務局長、稲田朋美議員による衆議院国土交通委員会での参考人質疑
(22)1月25日 ホテル関係者(被害ホテル連絡協議会及びセンターワンホテル半田)からヒヤリング
(23)1月28日 マンション住民(グランドステージ住吉、グランドステージ東向島、グランドステージ茅場町、グランドステージ藤沢、コンアルマーディオ横濱鶴見、グランドステージ川口、グランドステージ下総中山、グランドステージ赤羽、グランドステージ稲城、グランドステージ溝の口、グランドステージ川崎大師)からヒヤリング
(24)1月29日 グランドステージ川崎大師において破壊検査の現地立会い
(25)1月30日 第3回緊急提言を武部勤幹事長(当時)、林田彪プロジェクトチーム座長(当時)に提出
(26)2月1日 全国銀行協会、地方銀行協会、第二地方銀行協会、全国信用金庫協会、住宅金融公庫からヒヤリング
(27)2月2日 主婦連合会、衆議院法制局からヒヤリング
(28)2月2日 北側一雄国土交通大臣(当時)に申し入れ
(29)2月6日 金融庁、全国銀行協会、地方銀行協会、第二地方銀行協会、全国信用金庫協会、住宅金融公庫、国土交通省からヒヤリング
(30)2月8日 都市再生機構(国土交通省同席)からヒヤリング
(31)2月10日 衆議院法制局と法案作成につき検討
(32)2月15日        〃
(33)2月17日        〃
(34)2月21日 東京都、中央区役所、江東区役所、稲城市役所、藤沢市役所、川崎市役所、横浜市役所、欠陥住宅被害者連絡協議会吉岡和弘幹事会、国土交通省、衆議院法制局からヒヤリング
(35)2月23日 衆議院法制局と法案作成につき検討
(36)3月8日 WTから対象マンション住民の方への経過報告、 マンション代表からの意見要望、ヒアリング (金融庁・全銀協・衆議院法制局同席)
(37)3月13日 グランドステージ溝の口の建替えスキームにつきマンション代表からヒアリング
(38)3月29日 被害ホテル連絡協議会からヒアリング
(39)4月5日 国民金融公庫、商工中金、中小企業金融公庫、全国銀行協会・金融庁・国土交通省からヒアリング
(40)4月14日 国土交通省と意見交換
(41) 5月20日 現地マンション視察(グランドステージ赤羽、グランドステージ住吉、グランドステージ東向島、グランドステージ稲城、グランドステージ千歳烏山、グランドステージ池上) 現地集会・経過報告
(41)5月25日 マンション視察報告・検討国土交通省・金融庁・UR都市再生機構・建築業協会・日本建築士事務所協会連合会との検討会
(42)6月24日 牧原秀樹事務局長が日弁連主催の耐震偽装に関するシンポジウムにパネリストとして出席
(43)7月13日 国土交通省から現状と法改正についてヒヤリング
(44)平成19年1月23日 WTの幹部による意見交換
(45)1月26日 提言案について検討および国土交通省からのヒヤリング
(46)1月31日 国土交通省と意見交換
(47)3月6日 提言案についての検討および国土交通省からのヒヤリング

添 付 資 料

過去4回にわたる緊急提言               以 上     

(別記)
現状(平成19年2月26日現在)

(1)姉歯元建築士が関与した偽装物件は建築中だったものを含めて99件。
 うち構造計算書が偽装された分譲マンション(姉歯関連のものを含む)

(i)Qu/Qunが0.5未満の危険な分譲マンションー12棟

 うち除却工事が終了し、建築工事にまで着手しているのは1棟。除却工事に着手しているのは3棟。
 残りも建替えに関する合意(推進決議を含む)は進んでおり、合計10棟で終了。残り1棟は建築主が対応、さらに残りの1棟は改修決議。

(ii)Qu/Qunが0.5以上1未満の分譲マンション

 現在のところ、すべてが耐震改修の方向で検討中あるいは具体的計画に着手しているが、工事着手は建築主がヒューザー以外の2件を除いてはなされていない。

(2)非姉歯事件

(i)田村水落設計事務所

3件のホテルおよび1件の建築中のマンションにおいて偽装が発覚。

(ii)浅沼二級建築士

 29件のマンションに偽装が発覚。うち17件がQu/Qunが0.5以上1未満の物件。

(iii)サムシング設計事務所

 5件のマンションに偽装が発覚。ただし、Qu/Qunはすべて1.0以上。

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